「楽天RMSに導入されたAI機能ってどうなの?」
「AI機能を使ってみたいが、使い方がイマイチよくわからない」
この記事は、そんな方へ向けて書いています。
- 問い合わせ回答生成AI、商品作成説明文生成AIは今日から実務で使える
- 規制・法律・表現関係のチェックは人間が必ず行う
- 他のAIは実務で使うにはクオリティが低い
- AIは抜本的な解決策ではないので、あくまでもツールとして「正しく利用」したい
楽天RMSにAIアシスタントが導入された
2024年3月28日、楽天RMSにAIアシスタント(β版)が導入されました。
商品ページで使用する文章を作成してくれたり、店舗運営についてAIに相談できたりと、店舗運営を支援する機能が強化されたイメージですね。
機能 | リリース予定日 |
回答を生成(問い合わせ回答作成支援AI)- R-Messe | 2024年3月28日(木) |
データを解説(店舗カルテ分析支援AI)- R-Karte | 2024年3月28日(木) |
文章を作成(商品説明文作成支援AI)- R-Storefront | 2024年3月28日(木) |
AIチャットで質問(問い合わせ自動応答AI) | 2024年3月28日(木) |
画像を加工(商品画像加工支援AI)- R-Storefront | 未定 |
楽天新春カンファレンスで言っていた内容が実現されていて、「商品画像加工支援AI」以外は既にβ版がリリースされています。
- 回答を生成(問い合わせ回答作成支援AI)
- データを解説(店舗カルテ分析支援AI)
- 文章を作成(商品説明文作成支援AI)
- AIチャットで質問(問い合わせ自動応答AI)
今回は、既にリリースされた上記4つのAIを実際に使い倒してみて、その使い勝手・メリット・デメリット等を解説します。
あくまでも現在のβ版の評価です。
回答を生成(問い合わせ回答作成支援AI)
店舗様が指定した回答概要をもとに返信文を提案する機能です。
この機能を利用すると問い合わせ対応時間を短縮できるようになります。
回答概要を指定することで、返信に使える回答文を提案してくれる機能ですね。
単純に「ざっくりとしたテキストをそれっぽい回答に仕上げてくれる」だけと思いきや、ユーザーからのメッセージ内容も生成のための要素として含まれております。
例えば、「商品が不足しています」というユーザーからのメッセージに対して発送予定を記入して生成した場合、しっかりと商品不足に対するお詫びも入力されます。これは便利ですね。
ちなみに、句読点があるか無しかでも若干生成内容が変わっており、句読点が無い形で生成した場合は文章が若干冗長になる傾向があるようです。※上記は句読点無しバージョン
生成時間も10秒程度と短く、実際の業務で使うシーンもかなり多いのでは、という印象です。
生成AI内部でデータも保持していないようで安心しました笑
お問い合わせ内容は店舗によって異なると思いますが、基本的にパターン化できるものが多く、それに対してAIで文章の細かな気配りを追加すれば、人間と見分けがつかないですね。
ただ、注意点としては、最終的に人間が「回答欄にコピー」ボタンをクリックするとはいえ、問い合わせ自体はお客様との直接の接点です。
ユーザーとの接点ということでAI利用は慎重に行いたいですね。
具体的には、AI生成文章のチェックは丁寧に行い、個別対応が必要なイレギュラーケースは都度人間が文章を作成、担当者には「ユーザーに直接、1:1で送られる文章」であることを強調しておく必要がありそうです。
- かなり優秀。今日から実際の業務に取り入れ可能
- 生成は1ヶ月1000回まで・楽天関係のURL以外は送信不可
- ユーザーが直接目にするメッセージなので、慎重な利用が必須
データを解説(店舗カルテ分析支援AI)
店舗カルテトップのデータに基づき、前年比較での売上傾向や特徴を解説する機能です。
店舗様でのデータ分析を支援し、より迅速な意思決定ができるようサポートします。
店舗カルテのこのボタンですね。
「データをAIで解説」をクリックすると、AIがデータを解説してくれます。
基本的には以下の売上の公式にあてはめて、その数値の変化を解説してくれます。
売上=アクセス人数×転換率×客単価
具体的な文章の内容は「売上がこれぐらい上がりました(下がりました)。アクセス数はこれぐらい変化して、転換率はこれぐらい変化して、客単価はこれぐらい変化しました。(中略)」ですね。
対象期間は今月、または先月。
この店舗カルテ分析支援AIはβ版ということですが、現状は一番不満というか、ガッカリ感が大きいAIですね。
- 単純に数字の変化についてさらっと言及しているだけ
- 肝心の理由・根拠については漠然と触れるだけ
実際、楽天内部は多くの店舗・楽天市場本体のアクセス数をはじめ、他業種と比べての転換率等いくらでもデータがあるはずなので、そのあたりを加味して「現状における店舗のクリティカルな課題」と対応案ぐらいは出せそうなものです。
- 画像をこう変えたから新規流入のCTRがこれぐらい上がったけど、CVがこれぐらい下がって、結果いくら売上に貢献したよ
- 今回はAmazonのブラックフライデーと楽天のセールが被ったので、楽天全体の売上が平常時よりもこれぐらいダウンしたよ
- 3月で広告費を消化したい店舗が多い中で、RPPの運用額を増額しなかったので、PR経由のインプレッションが落ちたよ。本当はこれぐらいの予算が最適だったよ
β版が改良された暁には、このようなデータ分析を期待しております!
- 売上と、それを構成する要素の上下に言及しているだけ
- 具体的な施策、時期、市場環境についての言及は無し
- 実務では使えないので、今後の成長に期待
文章を作成(商品説明文作成支援AI)
商品のアピールポイントを入力することで、より独創性のある商品説明文の作成ができます。
AIで提案する商品説明文は、店舗様ご自身で確認・修正後、PC用/スマートフォン用商品説明文としてお使いいただけます。
以下の情報から、商品説明文を提案してくれる生成AIです。
この生成AIは明らかに今回の目玉ですね!
- 商品名
- 商品画像
- アピールポイント
試してみたところ、商品画像は1画像のみの選択ができ、アピールポイントは空欄でも構いません。
この情報で生成してみました。
- ハンバーガーの画像
- 商品名はグルメバーガー 国産を強調
- アピールポイントは販売数、ボリューム、国産を指定
素晴らしいですね。
画像から「ジューシーなパティ」「野菜のシャキシャキ感」と情報を取得してくれています。
続いてこちらのスマホケース。
ちなみに商品画像が何点あろうが、生成AIで指定する画像は1点までしか選択できず、選択していない画像は全く影響しません。
※商品画像は別のAIで生成してみました。
上記のように、他にハンバーガーの画像があったとしても、スマホケースにフォーカスして文章を生成してくれます。
「国産の食材を使用」と書いてあるにも関わらず、「国産の素材」と解釈してくれています。
ちなみに当たり前ですが、入力(画像、商品名、アピールポイント)が全く同じでも、違う文章が生成されます。AIの特徴ですね。
続いてこちらの商品を試してみました。
アピールポイントを見て、ピンと来る人は来ると思います。
出ました!
残念ながら「最上級表現を避ける」といった仕様はなさそうですね。
AIが生成したとしても、使ってはいけない文章があるので気をつけましょう。
こちらは誤字を意図的に入力したケース。
柔軟に判断して、「かがりつけ」「★」を勝手に修正してくれています。優秀ですね。
「なんとか売りたい」というオーダーにも、生成結果で答えてくれています。笑
ちなみに、「アピールポイントを空欄」にした状態でもしっかり生成できました。
それでは続いて次の実験。
「商品名をつけてほしい」「説明文は100文字以内」という指示を出してみました。
しっかりと生成してくれていますね!
商品名の候補を10個ぐらい作ってほしい、と入れてみました。
10個あげてくれています。
文字数制限ですね。
こちらはしっかりと対応してくれています。
素晴らしいですね。
中盤で出てきた「世界一売れている」という表現のように、「ダメな表現」はまだ学習していないようです。
同時に、「商品名をつけてくれ」というオーダーへの回答として、「既に存在する商品orそれに酷似した商品名」を挙げてくる可能性があります。
薬機法などと共に気をつけましょう!
- かなり優秀で、今日から実務に使える
- 商品説明文だけでなく、商品名も考えてくれる
- アピールポイントは空欄でOK
- 最上級表現、著作権的な表現は人間がチェックする
AIチャットで質問(問い合わせ自動応答AI)
問い合わせ自動応答AIは2種類用意されております。
- 店舗運営サポートAI
従来の項目選択形式でのご入力に加え、お困りの状況をテキストでご入力いただくことで、解決に適した店舗運営Naviページをご案内します。
- EC相談AI
楽天市場の店舗運営業務において、文章要約、分類、校正などに生成AIをご活用いただけます。
店舗運営サポートAI
店舗運営サポートAIに売上を上げる方法を聞いてみました。このような回答です。
メッセージ中のテキストを抜き出して、それに関連するQAページ等をサジェストする感じですね。
解決しない場合はオペレーターに回されるシステム。
実際のところテキスト中のキーワードを拾っているだけのようですので、楽天のページ検索とほぼ変わらない機能ですね。
文章でも、キーワード羅列でも、出力結果はほぼ変化無し。
EC相談AI
楽天RMSのAIアシスタントとして搭載されているからと言って、特に楽天RMSに特化した情報は無いですね。
さすがに他店舗の売上は最初から無理と思っていましたが、初手からなんとなく「chatGPTみ」を感じていました。
上記は、楽天市場で人気が出るようなハンバーグのキャチコピーを尋ねた回答。
「極上」「至福」は個人的にchatGPTあるあるです。笑
RPPにおけるドライヤーのROASについて聞いてみました。
こちらも当たり障りの無い回答。
それに、弊社の考えとは数値も方針もずれています。
深堀りしてみましたが、結局「自分でやってくれ」「支援会社に聞いてくれ」だそう。
やはりchatGPTをベースに作られているようですね。
それに、色々と質問してみましたが「chatGPTに、楽天市場のビッグデータを加えたもの」では無いようです。
言ってみれば現状は「楽天RMSにchatGPTを入れているだけ」に近いですね。
※今後、ユーザーの質問やアップデートによって飛躍的に便利になる可能性はあります。
楽天カテゴリーについてもこのような回答。
ちょっと残念ですが、AIは導入が難しいので、このようなものでしょうか。
規制や著作権の問題もありますので、このような回答でも仕方ありませんね。
- 店舗運営サポートAIは、ページ検索機能と変わらない
- EC相談AIは、RMS上でchatGPTが使えるだけ
- chatGPTにプラグインを入れて使用したほうがまだマシかもしれない
楽天RMSでのAIアシスタントを使うテクニック・注意点
ここまで楽天RMSでのAIを使ってみましたが、基本的に「商品説明文生成AI」「回答生成AI」以外は使わなくて良さそうですね。
さらに、上記2つの優秀なAIアシスタントを使う場合も、注意が必要です。
- 過信しすぎない
- 個人情報を入力しない
ECサポート会社としてこの記事をご覧の皆様に伝えたいのは、絶対に「過信しすぎない」ことです。
結局AIが得意なのは「法則性の発見」「大量なデータの汎用化」でして、普通のことになりがちですし、その「普通」が正しいかどうかの予測はまだ人間のマーケターのほうが優秀なのでは?と感じております。(少なくとも、人間に勝てるレベルでAIを使いこなすにはまだ難しい印象)
AIを使うと、キャッチコピーも訴求内容も「王道のもの」「よくあるもの」になりがちです。
唐揚げのキャッチコピーひとつでも、AIはいわゆる「よくある唐揚げ&類似領域のあげもの&食品関係などでよく使われているキャッチコピー」のモジュール・パターンをたくさん持っているだけで、キャッチコピーの訴求ロジック等は深く理解していません。
「深く理解してなくても出力結果がそれっぽかったら問題ないよね」との考え方のもとで使われる「プログラミング」「お客様サポート」等ではかなり優秀な反面、コピーライティングとなるとまだまだ成長の余地がありますね。
例えばAIコピーライターはまだ、単純に「唐揚げのキャッチコピーを考えてください」という指示では「舌鼓を打つほどの美味しさ」というキャッチコピーは作れても「舌鼓、フルコンボ」みたいなキャッチコピーはまだ作れません。
普通のことを言って普通に売上が上がるのは、確立されているブランドか、安さで売っている商品のみですね。この点から、過信しすぎず、ご自身で市場を細かく見つめる必要がありますね。
AIがあるからと思考停止していいわけではありませんね。楽天市場における中小店舗の生存戦略としてはまだまだブラッシュアップの余地があると感じました。
ネットショップについて、より詳しく知ってみませんか?
ECのロジックを知れば、「出来るかも」が増えます。
「出来るかも」が実現したら、楽しくなります。
楽しくなると、より店舗運営が「楽」になります。