「作っているのはメーカーで、うちは売っているだけ」——その感覚のままでいると、いつか足元をすくわれます。
2026年5月28日、EUの欧州委員会が、中国系ECのTemuに対して2億ユーロ(約370億円)の制裁金を科しました。理由は、違法・危険な商品がプラットフォーム上で売られるリスクを、Temuがきちんと評価・管理していなかったこと。商品を作ったのはTemuではありません。出店しているメーカーやセラーです。それでも、責任を問われたのは「売る場を提供していた側」でした。
食品ECを運営していると、「メーカーからもらった情報を載せているだけ」「仕入れ先が大丈夫と言っている」という前提で日々の運用が回りがちです。でも、Temuの一件が突きつけているのは、まさにその前提の危うさです。この記事では、Temuが何を問われたのかを整理した上で、食品EC事業者が自社の表示・安全管理で見直すべきポイントを考えます。
先取り結論:
- Temuは違法商品とリスク評価不備で約370億円の制裁金
- 問われたのは「管理の甘さ」
- 食品EC事業者は学ぶべきは、「言われたことを鵜呑みせず危機管理をする」こと
Temuに約370億円:問われたのは「商品」ではなく「管理の甘さ」

欧州委員会は2026年5月28日、TemuにEUのデジタルサービス法(DSA)違反で2億ユーロ(約370億円)の制裁金を科すと発表しました。DSAに基づく制裁としては過去最大で、2025年12月に旧Twitter(X)へ科された1億2000万ユーロを上回ります。
ここで注目してほしいのは、罰せられた理由です。「危険な商品を売ったこと」そのものというより、「危険な商品が出回るリスクを、具体的な証拠に基づいて分析・評価していなかったこと」が問題とされました。欧州委員会は、リスク評価は形式的なチェック作業ではなく規制の根幹だ、という趣旨を明確にしています。
つまり、「知らなかった」「メーカー側の問題だ」では済まされず、売る場を提供している以上、安全性を管理する責任があるという判断です。Temu側はこの決定を不服とし、金額は不均衡で、対象となった2024年当時の評価は現在の体制を反映していないと反論しています。
具体的に何が問題だったのか
委員会の調査では、独立機関による抜き取り検査が行われました。とくに問題が大きかったのが、充電器と乳幼児向け玩具です。
充電器では、検査した製品の多くが基本的な電気安全性テストに通らなかったと報告されています。乳幼児向け玩具では、有害物質(フタル酸エステル類)が安全基準値を大きく超えて検出されたケースや、小さな部品による窒息リスクが確認されました。欧州の消費者団体の検査では、一部の玩具から基準値の200倍を超えるフタル酸エステルが見つかったという報告もあります。
食品ECの商材とは直接関係のないカテゴリに見えるかもしれません。でも、構造はまったく同じです。
「消費者の口や体に入るもの」「安全性の表示が命を左右しうるもの」を扱っている点で、食品ECは玩具や充電器以上にシビアな世界です。ユーザー数は7500万人を超えており、欧州委員会は「大規模オンラインプラットフォーム」として厳格な規制を適用しました。
食品EC事業者が「自分ごと」として受け取るべき教訓

ここからが本題です。プラットフォームの巨額制裁というニュースの奥にある教訓は、食品EC事業者にこそ刺さります。
食品ECで、もし販売した商品にアレルゲンの表示漏れや、原材料の誤表示があった場合。仮に原因がメーカー側の情報提供ミスだったとしても、消費者に商品を届けたのは販売者であるあなたです。「うちは正しい情報をもらって載せただけ」という言い分は、回収・返金対応が発生する現実の前ではほとんど意味を持ちません。Temuが「セラーが持ち込んだ商品だから」で免責されなかったのと、まったく同じ構造です。
とくに食品ECで表示漏れ・誤表示が起きやすいのは、次のような場面です。
- 仕入れ先やメーカーがリニューアルしたのに、その情報が販売側に伝わっていない:原材料が変わっているのに、商品ページは古い表示のまま
- セット商品・ギフト・詰め合わせ:構成要素が増えるほど、アレルゲンの反映漏れが起きやすい
- 過去に作った商品画像やLP:本文は更新しても、画像内の古い表示が残っている
これらは、悪意がなくても、管理体制がなければ普通に起こります。Temuが問われたのも「悪意」ではなく「管理の欠如」でした。
下記の記事では、食品ECにおけるアレルギー表示漏れについて詳しく解説しております。是非この機会にお読みください。
明日からできる、食品ECの安全管理チェック
Temuのような「知らないうちに問題を抱えていた」状態を避けるために、食品EC事業者が自社で回せるチェックを挙げます。
- 万一の回収に備えて、販売履歴や購入者への連絡手段を管理できているか
- 新商品の登録前に、アレルゲン(特定原材料)の有無を原材料明細書ベースで確認しているか
- 仕入れ先・メーカーのリニューアルや仕様変更を、事前に通知してもらう取り決めがあるか
- 商品ページ本文・商品画像・モールの属性欄で、表示内容が一致しているか
- セット商品・ギフトで、構成要素すべての原材料を反映できているか
このチェックは、商品点数が増えるほど回すのが大変になります。だからこそ「気づいたときにやる」ではなく、新商品を出すたびの定型フローに組み込んでおくことが大切です。
まとめ:Temu制裁金から学ぶ食品EC事業者の教訓
Temu制裁金事例から、EC事業者が学ぶべき重要な教訓をまとめます。
- 2026年5月28日、EUがTemuにDSA違反で約370億円の制裁金。DSA下では過去最大
- 問われたのは「危険な商品を売ったこと」より「リスクを管理していなかったこと」 商品を作ったのがTemuでなくても、売る場を提供した責任を問われた
- 食品ECも構造は同じ。アレルゲン表示漏れ・誤表示は、メーカー起因でも販売者が回収対応に巻き込まれる
- 新商品登録前のアレルゲン確認、仕入れ先との情報更新ルール、表示の整合性チェックを定型フロー化するのが実務上の要
GOATでは、食品ECの商品ページ・商品画像・モール登録情報を確認し、アレルギー表示や原材料情報の抜け漏れが起きやすい箇所を整理しています。「以前のコンサルでは売上の話ばかりで、こういう足元のリスク管理まで見てもらえなかった」という食品EC事業者の方こそ、一度GOATと一緒に棚卸しをしてみませんか?
ネットショップについて、より詳しく知ってみませんか?
ECのロジックを知れば、「出来るかも」が増えます。
「出来るかも」が実現したら、楽しくなります。
楽しくなると、より店舗運営が「楽」になります。

