「食品ECに参入したいけど、最新トレンドがわからない…」
「2025年の下半期、何に注力すべき?」
この記事は、そんな方に向けて書いています。
ここ数年、市場の拡大とともに求められる戦略も高度化しており、単なる商品販売だけでなく「体験」や「ブランド価値」まで設計する視点が重要になっています。
この記事では2025年下半期に押さえておくべき食品ECの最新トレンドを、初心者にもわかりやすく解説していきます。
- 2025年も食品EC市場は拡大傾向。コロナ禍を経て「おうちグルメ」などライフスタイルの変化が影響
- インフラ整備による冷凍食品のギフト需要増。「手抜き料理」から「プレミアム商品」へ
- LINEギフトなど外部販路活用による獲得拡大、定期購入やクーポンによるLTV(生涯顧客価値)向上が重要
- ECでも「動画が勝つ」時代。動画を活用した87.3%が売上向上
食品EC市場の拡大とその理由。2025年も拡大傾向
食品EC市場はコロナ後も継続的な成長を続け、2025年も拡大傾向にあります。
令和5年(2023年)における日本国内のBtoC(消費者向け)EC市場規模は、前年比9.23%増の24.8兆円となり、2014年以降、一貫して右肩上がりの成長を続けていることが分かります。

物販系分野に関する市場規模の内訳をみると、カテゴリー「食品、飲料、酒類」の市場規模は2023年で2兆9,299億円に達し、2022年から6.52%の増加を記録しています。
さらに注目すべきは市場規模の拡大にとどまらず、EC化率も着実に進んでいる点です。

さらに、食品EC市場の拡大を支えている主な背景には、次のような要因が挙げられます。
- ライフスタイルの変化による「時短・利便性ニーズ」の高まり
共働き世帯や高齢者の増加により、「買いに行く」よりも「届けてもらう」選択が日常化。 - 冷凍・低温物流インフラの整備
かつては難しかった生鮮食品やスイーツなども全国配送が可能に。冷凍・冷蔵対応の強化によって取扱可能な商品が広がっている。 - コロナ禍を契機とした非接触購買の定着
パンデミックを経て、ネットで食品を買う習慣が一般化。高齢層や非ECユーザー層にも広がり、2023年以降もこの購買行動は継続傾向。 - 「おうちグルメ」志向とギフト需要の融合
外食控えにより、自宅での“ちょっと贅沢”が定着。高級冷凍弁当・スイーツや、LINEギフトのようなカジュアルギフトの需要が増加。 - EC支援体制の進化による参入障壁の低下
制作・物流・販促など、かつては障壁だった部分を外注・代行でカバーできる体制が整い、食品メーカーや個人事業者の参入が加速したため。
この傾向は止まらず、2025年下半期も単品通販から定期購入、そしてギフト需要への拡大が顕著になると予測されています。
このような市場環境の中、食品ECで成功するためには、単なる商品販売にとどまらず、体験価値やブランディングを含めた総合的な戦略が必要となってきています。
2025年下半期の注目トレンド5選
2025年の食品EC市場では、消費者行動や技術進化に伴い、いくつかの明確なトレンドが浮かび上がっています。これらを理解し、自社のビジネスに取り入れることで、競争優位性の確保に役立ちます。
特に注目すべき5つのトレンドについて詳しく解説します。
冷凍食品が「贈り物」に。高品質化とギフト需要が急伸
かつて“手抜き料理”のイメージがあった冷凍食品は、近年、技術革新によってプレミアム商品としての立場を確立しつつあります。
そして今、冷凍食品は「贈る」時代へと突入しており、市場も拡大傾向にあります。
- 冷凍食品(国内生産+輸入)の消費額は、2023年に1兆2,472億円で前年比+3.4%増
- 家庭用冷凍食品の年間支出額(2人以上世帯)は2020年に8,787円だったのが2024年になり11,032円と+25.5%増
- ECでの「贈答品」支出額は2024年で前年比+2.1%増
くわえて日本のギフト市場全体も回復基調にあり、2025年の市場規模は前年比101.5%の11.35兆円に達する見込みです。

こうした背景や巣ごもり需要を経て冷凍食品の利用が定着し、“美味しくて映える冷凍食品”をギフトに選ぶ流れが主流化しています。
例えば、以下のようなプレミアムギフトセットやスープ用冷凍野菜ミックスなど、今までの冷凍食品のイメージとは大きく異なり、”ギフト感”や”プレミアム感”が増していることが分かります。


- 冷凍食品特集2024 – 日本食糧新聞・電子版
- 2025年食品トレンド・業界動向④ 冷凍食品|食品開発OEM.jp – 株式会社丸信
- 家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について(二人以上の世帯)-2024年(令和6年)平均結果-
- ギフト市場に関する調査を実施(2024年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
「物流品質=ブランド品質」へ。冷凍対応が競争力に直結
今後は、「最短」よりも「安心・品質」が選ばれる時代です。
信頼できる冷凍対応物流業者との連携は、リピート率向上やクレーム削減に直結します。実際に、物流インフラの整備を後押しする動きも加速しており、具体的には次のような変化が見られます。
- 食品衛生法の改正(2024年)により、冷凍食品を扱う事業者には「温度管理の記録保持」が義務化された
- 冷蔵倉庫事業者が取り扱う貨物総量は、冷凍食品の取扱量増加や家庭のライフスタイル変化を背景に、年々増加傾向
- ヤマト運輸は、2023年6月にグループ初となる保冷専用の大型ラストマイル拠点「低温輸配送センター 東京南エリア」を開設するなど、大手配送企業が冷凍専用施設やルートを強化中
これらのことから、食品ECを下支えする物流インフラの整備・強化(特に冷凍食品対応)が着実に進行していることが明らかです。
今後は、「配送品質=ブランド品質」と捉えられる傾向がさらに強まるため、徹底した品質管理が求められるでしょう。
- 食品衛生法の改正について|厚生労働省
- 冷蔵倉庫の現状、課題と今後の方向
- ヤマト、東京・品川にグループ初の保冷専用大規模ラストマイル拠点開設 │ LOGI-BIZ online ロジスティクス・物流業界ニュースマガジン
LINEギフトなどの外部販路が顧客獲得の主戦場に
自社ECだけでは限界がある中、今注目を集めているのがLINEギフトをはじめとした「外部販路」の活用です。
例えばLINEギフトの利用者データを見ても、1つのプラットフォームだけで膨大なユーザーにリーチできることがわかります。
- LINEギフト利用者:贈り手 約1,000万人/受け手 約1,500万人(2024年3月末時点)
- LINEギフトの年間利用者 = LINEユーザーの5人に1人が年1回以上使用
- 自宅配送型ギフトの取扱高は前年比167%
LINEギフトは「住所不要」「メッセージ付き」「スマホ完結」という特長があり、以下のようなメリットがあります。

EC事業者にとっては、新規顧客の獲得やギフト経由での認知拡大にもつながるため、ぜひ活用を検討してみてください。
また、LINEギフト以外の外部販促サービスには以下のようなものもあります。
- giftee(ギフティ)
SNSやメールでギフトURLを送るだけで、ドリンクチケットやスイーツ、雑貨など多彩なギフトを贈れるサービス - Gift Pad(ギフトパッド)
カタログギフト形式で商品を選んでもらえる、法人ギフトや内祝いなど「選べるギフト」に特化したプラットフォーム - Yahooショッピング
Yahoo!ショッピングの商品を住所不要でLINEやメールで贈れる、大手モールならではの安心感と集客力が魅力
- LINEギフトの今と未来 サービス概要からEC業界における特徴、ショップ活用事例まで|LINEヤフー株式会社
- LINEギフト、累計ユーザー数が3,000万人を突破!今年の母の日の流通額は昨年比130%を記録、“1日の流通額”過去最多を更新 | LINE株式会社のプレスリリース
LTV(生涯顧客価値)を高める販促へ。定期便とクーポン活用が重要に
「1回きりの購入」で終わらせず、いかにリピートしてもらうかが重要です。
定期便を導入することで、安定したリピート購入が見込めるようになり、継続的な売上確保につながります。さらに、一人ひとりの顧客から得られる売上(LTV)を最大化するうえでも、有効な仕組みといえます。
例えば定期購入の導入が一般化しつつあり、通販利用経験者のうち「商品を定期購入したことがある」人は40%超、現在も利用中の人は26.7%との調査結果もあります。

定期便利用者は、購入履歴確認などの目的でサイトのマイページ訪問率も約70%と高いこともわかっており、定期便顧客がより深くブランドと関わり継続購買していることを示しています。

またクーポンによるインセンティブ提供も重視されており、ECサイトで商品レビューを書く理由として「クーポンがもらえるため」が最も多く挙げられました。
この結果から、適切な特典提供が顧客の能動的な行動を促し、ひいてはロイヤルティ向上につながることを示唆しています。

定期便モデルの普及とクーポン施策の活用によって、リピート率向上・LTV最大化することが重要です。
- ECサイト「マイページ」利用率は約60%・定期便利用者では70%超に/エルテックス調査|ECzine(イーシージン)
- 株式会社いつも「生活者のEC利用実態調査2024」レポート | 株式会社いつものプレスリリース
ECでも「動画が勝つ」時代。売上拡大には動画の活用が必須
商品の写真・動画といった「見せ方」が購買率に与える影響はますます大きくなっており、卸売・小売・製造業のEC事業を対象とした調査では、87.3%が動画活用により売上向上しています。

また動画を活用して売上が上がった人の64.6%は、110%以上の売上が増加しているという結果もでています。

売上が伸びた要因としては約7割の事業者が「購入意欲を高められたこと」、約5割が「情報を効果的に伝えられたこと」を動画活用のメリットに挙げています。

商品紹介動画などの活用は、ユーザーの理解促進や購入率の向上に大きく貢献しており、実際に多くの事業者が導入を進めていることから、今や動画活用はEC運営において欠かせない施策といえるでしょう。
まとめ:市場の流れを正しく捉え、競争に負けない戦略を立てよう
改めて2025年下半期のトレンドを振り返っていきましょう。
- 2025年も食品EC市場は拡大傾向。コロナ禍を経て「おうちグルメ」などライフスタイルの変化が影響
- インフラ整備による冷凍食品のギフト需要増。「手抜き料理」から「プレミアム商品」へ
- LINEギフトなど外部販路活用による獲得拡大、定期購入やクーポンによるLTV(生涯顧客価値)向上が重要
- ECでも動画による売上が増加。うち64.5%が売上110%以上伸びている
本記事でご紹介した2025年下半期の最新トレンドを理解し、自社のビジネスに取り入れることが成功への近道となります。
しかし、単にトレンドを追うだけでなく、自社の強みと組み合わせた独自の戦略構築が重要です。
まずは自社の現状を客観的に分析し、改善すべき点を明確にしましょう。そして、今回ご紹介したトレンドの中から、自社に最も適したものを選び、集中的に取り組むことをお勧めします。
ネットショップについて、より詳しく知ってみませんか?
ECのロジックを知れば、「出来るかも」が増えます。
「出来るかも」が実現したら、楽しくなります。
楽しくなると、より店舗運営が「楽」になります。